副腎腫瘍 - 泌尿器科の疾患と治療:東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 泌尿器科学教室
副腎はどんな臓器ですか?
副腎なんて知らないという方も多いかと思いますが、副腎は生命の維持に不可欠な臓器です。
副腎は両方の腎臓の上に帽子のようにのっている左右1対の臓器で、大きさは3~4cmです。内部は表面の皮質と内部の髄質に分かれていて、非常に大切な各種のホルモンを産生しています。たとえば、皮質から、コルチゾル、アルドステロン、性ホルモン、髄質から、アドレナリン、ノルアドレナリンなどを分泌しています。これらのホルモンは体の中でその濃度が一定に保たれ、過剰になったり不足したりしないように分泌量が調節されています。両方の副腎の機能が低下すると、内服でのステロイドの補充が必要となります。
最近は人間ドックの普及などで副腎腫瘍が偶然発見されることが増えています。副腎の腫瘍には、腫瘍はあるが過剰にホルモンを分泌しない非機能性腫瘍と、腫瘍からホルモンを過剰分泌する機能性腫瘍があります。前者の多くは、検診や他疾患の精査中に偶然発見されるものがほとんどです。後者は、高血圧や糖尿病を主症状として内科を受診し、その検査の過程で判明します。発見の契機に関係なく、精密検査が必要と判断された場合には、内分泌内科に紹介され、必要に応じて入院、精査します。基本的に機能性腫瘍は、サイズに関係なくすべて手術適応となります。一方、非機能性腫瘍は基本的には、経過観察の対象となります。しかし、サイズが大きい場合や、経過観察中に増大する場合は、悪性腫瘍の可能性もありますので� ��手術を検討します。ただし、以前他のがんを患ったことがある方の場合、そのがんの転移の可能性もありますので、まず主治医に相談してください。ときには、両側の副腎がはれていることもあり、その場合は、脳下垂体の検査なども追加し、総合的に判断します。
副腎腫瘍にはどんな種類がありますか?
一言で副腎腫瘍といっても細かく分けると幾つかの種類に分けられます。主に産生するホルモンと組織学的な良性、悪性で分類されます。
気分循環性障害
代表的なものとして、クッシング症候群はコルチゾルを、原発性アルドステロン症はアルドステロンを、褐色細胞種はアドレナリンなどを作ります。褐色細胞腫は、副腎以外の場所にも発生する腫瘍です。一般的には、クッシング症候群、原発性アルドステロン症は良性の病気です。褐色細胞種の良性、悪性の判断が難しい病気で、遺伝する場合もありますので、医師とよく相談し、長期の経過観察が必要です。副腎に発生する悪性腫瘍は比較的まれですが、時にホルモンを産生したり、周囲の臓器に拡がることもあります。
副腎腫瘍の症状を教えてください。
副腎腫瘍の症状は主にその腫瘍が過剰に作るホルモンによって引き起こされますので、ホルモンの種類によって異なります。
1.ホルモン非産生腫瘍
ホルモンを作っていないので症状はほとんどありませんが、稀に急に大きくなったために背中の痛みや、周囲の臓器を圧迫し腹部膨満感や食欲不振を起こすこともあります。
2.クッシング症候群
高血圧、糖尿病、免疫力低下、多毛、肥満(手足は細い)、骨粗鬆症、性格変化などがあります。
3.原発性アルドステロン症
高血圧、血中カリウム低値、筋力低下、手足のしびれなどがあります。
4.褐色細胞腫
拒食症から心臓problms
高血圧、脈が速い、頭痛、便秘、高血糖などがあります。また普段は何も症状がないのに、運動・ストレス・刺激により発作的に症状が出ることもあります。
どんな検査をするのですか?
通常CT検査や超音波検査で副腎腫瘍の大きさ、形、内部の構造などを調べます。また採血検査・尿検査などでホルモンを過剰に産生していないかを調べます。
必要に応じてMRI検査やシンチ検査なども行われます。機能性腫瘍のなかで最も多い原発性アルドステロン症は、腫瘍自体が小さく、CT検査に加えて放射線科の協力を得て、血管造影をしながら左右の副腎静脈からアルドステロンをサンプリングして、存在部位の診断をつけます。
どんな治療をするのですか?
ホルモン非産生腫瘍の場合は様子を見ることが多いですが、がんの可能性を否定できない場合は手術で摘出をすることがあります。
ホルモン産生腫瘍は原則として手術で摘出します。術前のホルモンコントロールを内分泌内科で行い、手術は泌尿器科で行い、術後は泌尿器科、内分泌内科合同で管理します。手術ができない方の場合は、ホルモンの作用を抑える薬(降圧剤など)を使います。手術後も、しばらくは、内服治療を継続する場合もあります。
どのような手術をするのですか?
当科では、すべての副腎腫瘍に対して、ミニマム創内視鏡下手術(腹腔鏡手術ではありません)を行っています。
詳しくはミニマム創内視鏡下手術の項目をご覧下さい。
がんの可能性はありますか?
まれですが、副腎にもがんがあります。副腎のがんが疑われるのは腫瘍が大きいとき(5cm以上)、採血検査やCT検査などでがんの可能性があると判断された時などです。このような場合は、通常摘出手術をします。
がんであるかどうかは摘出した副腎の細胞を詳しく検査して判断します。がんと診断された場合は、追加治療を行うことがあります。
→ 副腎摘除術の入院時の流れはこちら
文責:田中・増田
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